高見沢さんは、叩かれた頬を押さえていた手を離し、私は思わず要を見た。
要「さくらとデート中に、菫に会ったあの日…椿に言ったんだ。
“ずっとさくらの側にいたいから…20歳を待たないで、許嫁を解消して欲しい”って」
菫「20歳って何…」
椿「私と要がお互い20歳になった時、お互い好きな人がいなかったら…これがお父様達が交した約束よ。それに、私要にちゃんと言われてたのよ。さくらちゃんを探し出した時から…」
さ「え?」
椿「見つけたらもう後悔はしたくないから、だから…見つけたら絶対付き合うんだって。その言葉通り要はさくらちゃんを見つけ出し、付き合った」
椿さんが私の事知ってるって、本当だったんだ。
椿「菫、あなたは勘違いしてたみたいだけれど。要は桐生総合病院を継ぎはしないし、私達の関係も、家族以上の気持ちは無いのよ」
菫「そんな…てか待ってよ!だって要は唯一の男なのよ!?」
椿「桐生家に長男…つまり、要が産まれた時、雅さんは“このままだと弟の将来は跡取りで決まってしまう”と考えた。だから、ご自分が桐生家長女として跡を継いだの」
要「だから俺は…好き勝手していられるんだよ」
そう…なんだ。確かに雅さんはお医者さんだったけど、まさかそんな理由があったなんて…
椿「要が久しぶりに来た…許婚を解消してくれと言ったあの日の夜。お父様にお話して、申し込んだお父様自身も了承して下さったわ。だから私も、高見沢家の跡取りとして動き出したの」
菫「え…?」
椿「来週、お見合いをするのよ。良い婿養子を得るために」
菫「そんなっ…」
高見沢さんは、椿さんによって次々と伝えられる真実を、目を見開いて聞く事が精一杯の様に見えた。
椿「だから、あなたのした事は全て無意味なの。意味もなく、関係無い人達を傷つけた。
だから要と…さくらちゃんにキチンと謝罪なさい。それから」
そう厳しい声で高見沢さんに言った後、ドアの方を見て名前を呼んだ。
椿「時!」
さ・要「え?」
私達が目を見合わせていると、足音が近づいてきた。
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- 2009/07/20(月) 21:52:20|
- 恋は雨とともに 第81話~第90話 第90話|
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